男の恋とは、自分の思いを強引に押し進めることでしかないのか、イールの言動はまことに一方的だ。
「髪結いの亭主」のパトリス・ルコントが、ジョルジュ・シムノンの原作『イール氏の犯罪』(邦題『仕立て屋の恋』ハヤカワ文庫刊)をもとに監督・脚本を手がけたもので、製作順としては「髪結いの亭主」の前作。
アリスが考えているのは殺人を犯したエミールのことだけだ。
だからアリスの思いをないがしろにするイールのおめでたさを、アリスは利用する気になったのだろう。
極端にきれい好きで孤独なイールは近所の人々からは嫌われており、売春宿に通い、ボーリング場で抜群の腕を披露することを習慣としていたが、そんな生活に変化が起きていた。